怪談夜話

怪談

千葉県には、昭和時代の怪談が数多く残されています。その中でも、特に身の毛もよだつような話をご紹介します。

ある夏の夜、千葉市の古い下町にある一軒の古民家で起こった出来事です。この家には、若い夫婦とその幼い娘が住んでいました。夫は仕事で遅くまで帰ってこないことが多く、妻と娘は二人きりで過ごすことが多かったのです。

ある晩、妻は娘を寝かしつけた後、一人で台所に立っていました。時刻は夜の10時を回った頃。突然、背後から小さな足音が聞こえました。驚いた妻が振り返ると、そこには見知らぬ少女が立っていました。顔は蒼白で、服装は昭和初期のもの。少女は何も言わず、ただ無表情に妻を見つめていました。

妻は恐怖に震えながらも、「誰?」と尋ねましたが、少女は答えず、ただじっと見つめ続けました。妻が恐る恐る手を伸ばそうとした瞬間、少女は消えました。次の瞬間、娘の部屋から泣き声が聞こえ、妻は急いで駆けつけました。娘は泣きながら、「お姉ちゃんが怖かった…」と言いました。しかし、娘には姉はいませんでした。

このことを夫に話すと、夫は古い家の履歴を調べ始めました。すると、この家では昭和20年代に、実際に少女が亡くなったことが判明しました。彼女は交通事故で亡くなったのですが、その夜、彼女が亡くなった時間とほぼ同じ時刻に妻が見た少女の霊が出現したのでした。

それ以降も、時折夜中に少女の足音や笑い声が聞こえるようになったため、夫婦はこの家を売りに出しましたが、怪談話が広まり、買い手がつかなくなりました。最後には、家は取り壊され、現在はその場所には新しいマンションが建っています。しかし、地元の人々の間では、今でもあの少女の霊がどこかにいるという噂が囁かれています。

また、千葉県の山間部では、昭和30年代に起こった奇妙な事件が語り継がれています。ある村で、毎晩のように山から人間の泣き声が聞こえ始めたのです。最初はただの怪獣や野生動物だと考えられていましたが、ある日、村人たちが音の源を探しに行きました。そして、彼らが見つけたのは、かつて戦争で帰らぬ人となった兵士の亡魂が、故郷に帰れない悲しみを歌う姿でした。それ以来、その山道は「泣く坂」と呼ばれ、特に夜間には通る者が少なくなりました。

これらの怪談は、昭和の時代を通じて人々の心に恐怖と哀しみを刻みつけてきました。千葉県の歴史と風土が生み出す、深い闇と歴史の重さを感じさせる話ばかりです。

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