島根県の深い山奥にある古い集落には、誰もが知らない、不気味な秘密が隠されていた。
ある晩、村の若い男が森の奥へ狩りに行った。夜が更け、月明かりだけが頼りの暗闇で、彼は奇妙な光を見つけた。光は木々の間に漂い、まるで自分を引き寄せるかのように揺れていた。彼は好奇心に駆られ、その光の元へ足を進めた。
光の源は、巨大な木の根元にあった。そこには、石で作られた古びた門があり、門の向こうからは異様な声が聞こえた。男は恐れながらも、その門をくぐった。
門を抜けると、そこは別の世界だった。空は異様に赤く、星の配置も知らないもので、風の匂いも違っていた。そこには、人間とは別の生物が住んでいた。彼らは人間の形をしていたが、目は光り、声は虫の羽音のような不気味な響きで話す。
男は恐ろしさに逃げようとしたが、足が竦んで動かなかった。生物たちは男を取り囲み、何かを話し始めた。彼らの言葉は理解できなかったが、恐怖と絶望が伝わってきた。
その時、男は気付いた。彼らはこの世界に来た者を捕まえ、永遠にここに留まらせるために、歌のような呪文を唱えているのだと。男は絶望に打ちひしがれながらも、必死に逃げる道を探した。
時間がどれだけ経ったのか分からないが、男は必死に門を見つけ、なんとか戻ってきた。しかし、彼が戻ったのは彼が出発した夜ではなく、数十年後の世界だった。村は廃墟と化し、知っている人々は全て亡くなっていた。
男はその後、何も話さず、ただぼんやりと村の廃墟を見つめていた。彼の目には、異世界で見た赤い空が映し出されていた。そして、夜になると、村の住人は男の家から、異世界の生物たちの声が聞こえると言うようになった。
今もその村には、時折、異世界からの呼声が聞こえるという。集落の人々は、夜になると家に閉じこもり、決して外に出ない。なぜなら、外に出た者は、二度と戻ってこないからだ。