異世界の訪問者

伝説

大正時代、ある寒い冬の夜、富山県のとある山間の村に異世界からの訪問者が現れた。

村の北端に住む老夫婦は、暖炉の火を囲みながら静かな夕刻を過ごしていた。時折、窓を叩く風の音が、部屋を包む沈黙を引き立てていた。

「今日は何か変だな…」と老婆が呟くと、夫も同じ思いを感じていたかのように頷いた。

その時、突然のドアノックが二人を驚かせた。訪問者は見慣れない服装をしており、顔には理解不能な文字が刺青のように刻まれていた。

「我々は異世界から来ました。助けを求めています」と男性は言ったが、その言葉はまるで夢の中の声のように聞こえた。

老夫婦は彼らを招き入れ、暖炉の前で話を聞くことにした。訪問者は、自分たちの世界が崩壊の危機に瀕していると言い、地球と通じる扉を開くために必要なものを探していると説明した。

「何を求めているの?」と老婆が尋ねると、訪問者は「この村の地下に隠された、古の宝玉」と答えた。その宝玉は、伝説では村の創設者が異世界から持ち帰ったとされているものだった。

老夫婦は村の歴史を知る者として、宝玉の場所を知らなかったが、訪問者たちはその夜、村の古文書を調べ始めた。深夜、訪問者が見つけた古文書には、宝玉が村の神社の地下にあると記されていた。

翌朝、老夫婦と訪問者たちは神社に向かい、地下へと続く狭い階段を降りた。そこでは、冷たい空気と、見えない何かがいるかのような重苦しい雰囲気が漂っていた。

宝玉は見つかったが、取り出す瞬間、地響きが起こり、周囲の壁から異様な生物が這い出してきた。それらは人間とは全く異なる形で、触手のようなものが生えており、光を発する目で見つめてきた。

訪問者たちは宝玉を掴むと、何か呪文のような言葉を唱え、突然輝き出した宝玉と共に消え去った。地下は静寂に戻ったが、心地よい静けさではなく、何かが終わった後のような冷たい沈黙が残った。

その後、村では異常なことが次々と起こった。夜中に聞こえる奇妙な声、突然消える子供たち、そして、村の全員が見る悪夢。夢の中では、訪問者が持っていた宝玉が、村を異世界と結びつけ、異世界の住人が村に侵入してくるという内容だった。

村人たちは恐れ、神社を封印したが、恐怖は消え去らなかった。特に老夫婦は、毎晩、訪問者たちと過ごした時間を繰り返し夢に見るようになった。不思議なことに、夢の中の訪問者たちは笑顔で、まるでこの結果を予期していたかのように見えた。

それから数年が経ち、村は表面上は平和を取り戻した。しかし、夜が訪れると、村の人々は未だに異世界からの訪問者を恐れ、深い闇の中で、誰もが知らない恐怖の物語を生き続ける。

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