呪われた山村の秘密

実話風

ある秋の夜、私は初めて福井県の山奥にある小さな村を訪れた。村は深い森に囲まれ、古い家々がひっそりと立ち並んでいる。夜は静寂に包まれ、星の光だけが唯一の光源だった。

私が訪れた目的は、地元の歴史を調べるためだったが、村人たちは私を快く迎え入れてくれた。しかし、ある晩、村の古老が語り出した話は、私の心を凍りつかせるほど恐ろしいものだった。

「この村にはね、古い呪いがかかってるんだよ。戦後の混乱期、村の外れに住んでいた一人の女が、村の人たちに恨みを抱いて、死んだ後もその怨念が村を覆っているんだ。」

古老の言葉に背筋が寒くなった。彼女は村人たちに嫌われ、孤立して暮らしていたという。死後、その女の怨念は村の水源に宿り、時折、呪いの儀式が行われることがあったという。

「その儀式の日には、村の全員が集まって、彼女の墓の前に供物を置くんだ。だが、もし誰かがそれを怠ると、村に災いが訪れる。病が流行ったり、家畜が死んだり、時には人まで消えてしまうことがあるんだよ。」

その話を聞いた翌日、私は村の外れにある古い墓地を訪ねた。そこには手入れされていない古い墓石が無数に並んでいた。特に一つの墓石は、他のものよりも古く、苔むしていた。その墓石の前に、最近置かれた供物があった。

夕方、私は村の人々に混じって儀式を見学することにした。村の広場に集まった人々は、静かに祈りを捧げていた。儀式が終わり、皆が散会した後、私は一人その墓地に残った。

突然、風が強くなり、木々がざわめき始めた。そして、耳元で誰かの声が聞こえた気がした。「助けて…」という弱々しい声だった。周りを見回したが、そこには誰もいなかった。しかし、その声は再び聞こえ、私は恐怖で足がすくんだ。

その夜、宿に戻ると、夢の中でまたその女の声が聞こえ、彼女の姿が見えた。彼女は私に近づいてきて、何かを訴えかけていた。その瞬間、目が覚めた。

翌朝、村の人々は私の顔色が悪いことに気付いた。私はその日の内に村を去ることに決めたが、村を出る直前、古老が私に言った。「あの呪いは、知れば知るほど、深く魂に染みつくんだ。気をつけて。」

帰宅後も、その村で体験した恐怖は私を離れなかった。私の部屋には時折、奇妙な音が響くようになり、夜はその女の声を聞くようになった。私は今でも、あの呪われた村の秘密に縛られているかのような気がしてならない。

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