深夜の山道で出会ったもの

ホラー

ある深夜、私は車を運転して鳥取県の山奥を抜けていた。仕事が遅くまでかかり、帰宅するために暗く静かな山道を進んでいたのだ。

この道は日中でも人通りが少ないが、夜になると一層その静寂が増す。ヘッドライトの光だけが前方を照らし、木々の影が揺れる様はまるで何かが潜んでいるかのようだった。

突然、道の先に何かが立っているのが見えた。最初は人かと思ったが、その形がはっきりしない。もっと近づくと、その「何か」は人間の形をしているようだが、どこか異質な雰囲気を放っていた。背が高く、異様に細長い肢体。足元には靴ではなく、まるで根っこのようなものが見えた。

私はブレーキを踏んだが、車が止まる寸前までその「もの」は動かなかった。そして、私が驚いている間にも、その異形の存在はゆっくりとこちらに向かって歩き出してくる。

「何か聞いた?」と自分に問いかけながらも、何も聞こえない深い静寂だけが答えだった。だが、その存在が近づくにつれて、空気が重くなり、圧迫感が増してくる。その目の部分に光る何かがあるように見えたが、それが目なのか、別の何かなのかはわからなかった。

恐怖から逃れるように一気にアクセルを踏み込んだ。車は急に加速し、少し進むと後ろを見たが、何も見えなかった。あの存在は消えていたのか、それとも私の視界から外れただけなのか…。

翌日、地元の人に聞いてみたが、そのような存在について知る人はいなかった。しかし、数日後、同じ道を昼間に通った際に、道端に異常に大きな木を見つけた。その木の根元には、昨夜見た「もの」と似た形が彫り込まれていた。まるで警告のようでもあり、祈りのようでもあった。

以降、私はその道を通ることができなくなった。夜の山道であの存在と出会った恐怖は、深く心に刻まれ、忘れることはおそらく一生できないだろう。それは現実の恐怖であり、鳥取の山々が抱える暗い秘密の一部だったのかもしれない。

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