幽霊の足音と消えた人

心霊

大阪府のとある古いアパートで、一人暮らしを始めたばかりの男がいた。

彼は、引っ越してきたその日から、夜中に聞こえる不思議な足音に悩まされていた。足音は決まって深夜の二時に始まり、まるで誰かが部屋の中を歩き回っているかのように響く。だが、彼が起きて見回っても、誰もいない。

ある夜、彼はその足音の正体を突き止めようと決心した。目覚まし時計を二時にセットし、布団の中で待ち伏せることにした。

二時の鐘が鳴り、足音が始まった。ゆっくりとした、しかし明確な足音。男は息を殺し、静かに起き上がり、音のする方向へ歩み寄った。

足音は彼の部屋を横切って、廊下に出るドアの方へ向かっていた。彼はドアを開け、外を見た。廊下は暗く、月明かりがわずかに差し込む中、彼は何も見えなかった。

しかし、その瞬間、背後からまた足音が聞こえた。振り返ると、そこには誰もいないはずの空間から、足音だけが続いている。恐怖に駆られ、彼は慌てて部屋に戻った。

次の日、彼は近所の人々にこの怪奇現象について聞いて回った。すると、驚くべき話を聞いた。かつてこのアパートに住んでいた若い女性が、ある夜突然姿を消したというのだ。彼女は二時に散歩に出かけるのが日課だったらしい。

その日から、男は恐怖で眠れなくなった。夜になると、足音は毎晩如実に聞こえ、彼の心を苛んだ。ある夜、彼もまた夜の散歩に出ようと部屋を出た。

廊下に出ると、足音は彼の後ろからついてくるようだった。急に彼は振り返り、叫んだ。「何が欲しいんだ!」

その瞬間、足音は止まった。そして、静寂が訪れた。だが、その静けさも束の間、また別の音が聞こえ始めた。今度は誰かが泣いているような、かすかな声だった。

彼は恐怖で逃げるように部屋に戻り、翌朝、引っ越しを決意した。しかし、その夜の出来事以降、彼はどこに行っても足音を聞くようになった。まるで、彼がその足音の持ち主になってしまったかのように。

そして、数年後、その男もまた、誰にも知られずに姿を消した。アパートの住人たちは、今もその足音を聞いているという。

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