雪深い森の秘密

実話風

冬の日の午後、空は鉛色の雲に覆われ、地上には深い雪が積もっていた。私は友人と一緒に、北海道の山奥にある古い山小屋へ行くことにした。そこは、地元の人々でさえ避ける場所で、何十年も前に廃棄された村の近くにあった。

道中、私たちは車を降りて、雪の中を歩き続けた。風が頬を切り裂くように冷たく、目の前には白一色の世界が広がっていた。進むにつれ、森の深さが増し、木々の間から見える空もどんどん暗くなっていった。

やがて、山小屋が見えてきた。木造の小屋は雪に埋もれ、まるで墓標のように佇んでいた。扉を開けると、冷たい空気と共に、何十年も使われていなかった証拠の埃が舞った。

一夜をこの小屋で過ごすことにした私たちは、薪を集めて暖を取る準備を始めた。夜が更けるにつれ、外は静寂に包まれ、時折聞こえるのは風の唸り声のみだった。しかし、その静けさの中で、私たちは奇妙な音を聞き始めた。

最初は、屋根の上を何かが歩くような音だった。子狐や鳥かもしれないと思いながらも、その動きは人間よりも大きかった。次第に、その音は近づき、やがて小屋の内側から聞こえるようになってきた。

私たちは互いに顔を見合わせ、恐怖に打ち震えた。暖炉の火だけが頼りの光の中、突然、床板が軋み始めた。まるで誰かが歩いているかのように、しかしここには私たち以外誰もいないはずだった。

その時、暖炉のそばで、私たちは見た。薄暗い奥から、一瞬だけ見えた何か。人の形をした影が、暖炉の火で一瞬だけ照らされた。だが、私たちが目を凝らすと、そこには何もなかった。

夜が明けるまで、私たちは一睡もできなかった。朝、外を見ると、昨夜の足跡は雪に完全に埋もれていた。しかし、その朝、私たちは小屋の外に奇妙なものを見つけた。雪の上には、我々の足跡以外に、人間のそれとは明らかに異なる、何か巨大なものが這ったような跡が残っていた。

帰る途中、地元の老人にこの話をすると、彼は無表情でこう言った。「あの小屋には、村が消えた夜から何かが住んでいるんだよ。皆それを知ってる。だから誰も近寄らないんだ。」

その後、私は何度もその話を思い出す。特に雪が降る夜には、その恐怖が私の心を握りつぶすようになる。北海道のその森に何が潜んでいるのか、今もって私には分からない。だが、その夜の体験は、私の心に深く刻み込まれ、恐ろしい記憶として生き続けている。

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