闇に潜む視線

オカルト

ある晩、私は深夜の仕事から自宅に帰るために電車に乗っていた。

電車は終電で、車両内は私以外に数人の乗客しかいなかった。その静けさが妙に耳に響く。窓の外には街灯がぽつんぽつんと光っているが、次の停車駅まではまだ長かった。

座席に座り、ぼんやりとした視線を窓の外に向けると、そこに映るのは私の姿よりも、もっと何かが見えていた。それは影だった。

最初は自分の影だと思った。だが、電車がトンネルを抜ける度に、窓に映る影は微妙に動き、私の動きとはシンクロしていないことに気づいた。影は時折、こちらを覗き込むように首を傾げ、異常に大きな目を私に向けていた。

その異様な感覚に耐えかねて、私は急に立ち上がり、他の座席に移動した。だが、影は追ってくる。私がどの座席に移動しても、その影は必ず私の近くに現れるのだ。

最終的に、私はもう誰もいない車両の端にたどり着いた。そこで再び座ってみたが、影は今度は私の目の前、車窓の向こう側に現れた。

その瞬間、電車が一瞬だけ停まった。停車中、車両内の照明がわずかに揺れ、影は一層はっきりと見えた。そして、電車が再び動き出すと、影が消えたと思ったその時、隣の座席に誰かが座っている気配を感じた。

振り向くと、そこには何もいなかった。しかし、すぐにまたその視線を感じた。私は恐怖で身動きが取れず、ただただ次の駅を待つしかなかった。

駅に到着すると、私は慌てて降り、ホームの明かりが満ちる中でようやく安心感を得た。だが、後ろを振り返ると、再びその影が、私を見つめているように見えた。

それから何日も、私は夜の電車を避けるようになった。だが、あの影の視線は今でも時折、夜中に閉じたカーテンの向こうから私を見つめているかのようで、恐怖は消えない。

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