闇に潜む赤い目

伝説

山形県のとある村では、夜の闇が深くなると、誰もが知る怪奇現象が起こる。

村の北部に位置する、長い間放棄された古い家がある。その家はかつては裕福な家族が住んでいたというが、ある日突然全員が姿を消し、その後の調査でも何一つ手掛かりは見つからなかった。そして、年代不明のその家では、夜毎に異常なことが起こるようになった。

夜半過ぎ、月の光すら届かない闇の中で、その家から赤い光が一瞬だけ漏れ出すことがある。近隣の住人は、その光を「赤い目」と呼んで恐れている。最初にその光を見た者たちは、ただそれが何かの反射だと思っていた。しかし、その光を見た後、奇妙な出来事が次々と起こった。

ある夜、村の若者が好奇心からその家に近づいた。家の中に入る勇気はなかったが、窓から中を覗こうとした。その瞬間、深い闇の中で二つの赤い光が彼を見つめ返した。その光はまるで生物の目であり、若者は恐怖から逃げ出した。家に帰ってからも、その赤い目が脳裏に焼き付いて離れず、数日後には高熱を出し、うわごとを言い続けた。

「赤い目を見た…。見た…。」

彼の家族や友人は、病院へ連れて行ったが、医師もその症状の原因を特定できず、ただ彼が体験した恐怖が引き起こした精神的なショックだとしか言えなかった。

それから数年、村ではその家を避けるようになり、誰も近づかなくなった。しかし、時折、好奇心旺盛な者が「赤い目」を見てしまい、同じような症状に苦しむことが続いた。ある年、村の祭りの夜、酔った男たちがその家を探検しようと提案した。多くの反対を押し切って、彼らは家の中に踏み込んだ。

中は埃と荒廃に満ちていたが、何も見つからなかった。だが、帰る途中で一人の男が叫び声を上げた。彼は窓から再び「赤い目」を見たと言った。驚いたことに、他の男たちもその光を見たと証言した。しかし、その夜以降、彼ら全員が異常な行動を示し始めた。誰もが夜中に起き出し、家の外で何かを見つめ続けるようになったのだ。

その家は次第に村の「禁断の場所」となり、村人たちはその存在自体を忘れようとした。だが、何年かごとに、誰かが「赤い目」を見てしまい、また新たな恐怖が村に広がる。それはまるで、何かが村を監視し、時折その存在を思い出させるように仕組まれているかのようだった。

今でも、村の夜は深い闇に包まれ、その闇の中で赤い光が一瞬だけ見えることがある。それを見た者は、恐ろしい体験をしてしまうことが多い。そして、「赤い目」が何者で、何を求めているのか、未だに誰も知らない。ただ、見た者はその恐怖を永遠に忘れることができないのだ。

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