ある冬の夜、深夜の地下鉄に乗っていた私は、眠気に襲われていた。電車はほぼ空で、私のほかには数えるほどの乗客しかいなかった。
終点の駅に着き、乗客は次々と降りていったが、私はうつらうつらしながらも最後まで座っていた。ふと気づくと、ホームに降りた乗客たちが一斉に私を見つめていた。なぜだろうかと首を傾げたその時、電車の窓に映る自分の姿を見た。そこには、私の背後に赤い服を着た小さな影が立っていた。
慌てて振り返ったが、そこには何もなかった。気のせいかと思い、急いでホームに降り立った。駅員に確認すると、彼は顔を青ざめさせ、「あなたは今、何かを見たんですか?」と尋ねてきた。
その瞬間、背筋が凍った。駅員は続けて言った。「ここでは何年か前に、事故で亡くなった子供がいるんです。その子は赤い服を着ていたと…」
私は急いで駅から逃げ出した。家に帰ってからも、その赤い影が頭から離れなかった。数日後、ネットで調べると、私が降りた駅で、数年前に事故があったことが分かった。
以来、私は地下鉄に乗るたびに、座席に座ることを避け、常に背後を気にするようになった。あの赤い影が再び現れるのではないかという恐怖が、私の日常を覆いつくすようになったのだ。
今でも、あの冬の夜の地下鉄での体験は、私の心に深く刻まれている。忘れられない恐怖として、何度も夢に見る。そしてその夢の中で、私はいつも、終わりのない地下鉄を走り続けている。