暗闇の教室

学校

今から30年前、岩手県のとある中学校で、ある恐ろしい体験が語り継がれています。

その学校は、古くて大きな木造校舎でした。特に三階の理科室は、夕方になると不思議な現象が頻発すると噂されていました。ある晩、放課後の補習を終えた生徒たちは、友達のひとりが忘れ物をしたと言って、理科室に戻ることになりました。

理科室のドアを開けると、薄暗い中、見慣れた机と椅子が黙って立っていました。生徒たちはささやき声で話しながら、友達が忘れた教科書を探し始めました。窓の外では、夕陽が沈み、部屋を薄暗く染めていきます。

その時、異変が起きました。教室の奥の方から、かすかにだが確かに聞こえる、子供の笑い声。誰もいないはずの教室に、どうしてこんな声が? 生徒たちはぎょっとして互いに顔を見合わせました。

「誰かいるの?」

弱々しい声で呼びかけた時、突然、教室の電灯が一斉に消えました。闇が一気に広がり、生徒たちはパニックに陥りました。

「ねぇ、ここにいるよ…」

見えない誰かが、すぐ耳元で囁いたような気がしました。生徒たちは恐怖に駆られ、出口に向かって走り出しました。しかし、ドアはどうしても開かず、窓から逃げ出すこともできません。

その時、教室の片隅から聞こえる、何かを引きずるような音。古い黒板の前で、ほんのわずかな光が揺らめいていました。そこには、見覚えのない、白い服を着た子供が立っていました。その子は、無表情でこちらを見つめ、手には何かを握っていました。それは、血に染まった教科書でした。

一人の生徒が声を上げて泣き始め、他の生徒も追随するように泣き叫びました。そして、突然、電気がつき、すべてが元に戻ったかのように見えました。だが、その子供の姿は消えていました。

その後、生徒たちは教室から飛び出し、先生に助けを求めました。しかし、先生たちは誰もいなかったと言い張り、子供の姿も、血に染まった教科書も見つかりませんでした。

この事件以来、その理科室は「幽霊教室」と呼ばれ、誰もが近づくのを恐れる場所となりました。そして、怪談として語られるたびに、その恐怖は増す一方でした。

今でも、夜遅くに校舎の近くを通りかかると、どこからともなく子供の笑い声が聞こえると伝えられています。それは、恐ろしい夜の出来事の記憶が、学校の歴史に染み付いている証拠なのかもしれません。

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