闇に潜む影

サスペンスホラー

兵庫県のある山間の小さな村では、年代不明の恐怖が今もなお語り継がれています。

ある晩、若い男性が仕事から疲れて村へ戻ってきました。村は静かで、夜の闇が深く降り積もっていました。彼は自宅の門をくぐり、玄関の扉を開けました。部屋の中はひんやりとしていて、どこからともなく冷気が漂っていました。

「ただいま」と声をかけたものの、返事はありません。家族は旅行中で、彼だけが家に残っていました。疲れ果てた彼は、部屋の明かりをつけずにそのまま寝室へ向かいました。

ベッドに横たわり、ようやく一息ついたその時、何かが違うことに気づきました。部屋の奥から、かすかに、しかし確かに足音が聞こえるのです。最初は自分の聞き間違いかと思いましたが、その音は徐々に近づいてきました。

彼は恐る恐る起き上がり、部屋の電気を点けました。部屋は明るくなりましたが、足音は止みません。見回すと、何も変わった様子はありません。しかし、再び電気を消すと、再度足音が始まりました。彼はもう一度電気を点けましたが、今度はドアの隙間から誰かの影が見えたように思えました。

恐怖に身を震わせながら、男性はその影が何かを確かめようとしました。ドアを開けると、そこには何もいませんでした。だが、廊下の奥から、今度ははっきりと人の気配が感じられました。

彼は家の中を調べ始めました。各部屋を確認する度に、何かが彼を監視しているような気がしてなりませんでした。そして、二階の最後の部屋に入った時、彼は驚愕しました。

そこには、彼が見たことのない古びた鏡があり、その中には自分以外の誰かの姿が映っていたのです。その人物は彼を見つめ、口元を歪めて笑っていました。男性はパニックに陥り、鏡から目を逸らしました。

しかし、その瞬間、背後から冷たい手が彼の肩に触れた感覚が走りました。振り返ると、そこには誰もいませんでしたが、その冷たさは消えず、彼の体を凍りつかせました。彼は慌てて家から逃げ出し、夜通し走り続けました。

翌朝、村人たちが彼を発見した時、彼は意識不明で倒れていました。病院に運ばれた後、彼は何度も同じ言葉を繰り返していました。「鏡に誰かがいた…」と。

その後、彼は村を去り、二度と戻ってくることはありませんでした。そして、その家は誰も住まず、荒れ果て、村人たちも近づかなくなりました。

今でも、その家の周辺では不思議な現象が起こり、夜になると足音や人の気配が聞こえるとささやかれています。そして、その鏡は今もその部屋に残され、誰もが恐れる存在として語り継がれているのです。

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