闇に潜む影

実話風

今から20年前のある夏の夜、奈良県の山奥にある古い民家で、若い女性が一人で過ごしていた。彼女は仕事の都合で、この古い家に住むことになったのだが、不思議とその家は周囲の自然に溶け込むように静かで、彼女はその静けさに不気味さを感じ始めていた。

その夜も、彼女は部屋の窓から見える湖面に月が映る美しい風景に見とれていた。しかし、その美しさの裏には何か得体の知れないものが潜んでいるような気がしてならなかった。

深夜、彼女は布団の中で目を覚ました。外はすでに真っ暗で、月も雲に隠れていた。彼女は何かが部屋にいる感覚に襲われ、恐る恐る周囲を見回した。そこには何もなかったが、空気が重く、息苦しいほどの圧迫感があった。

彼女は慌てて電気をつけようとしたが、スイッチを何度押しても灯りは点かない。暗闇の中、彼女は背筋に冷たいものが走るのを感じた。そして、彼女の視界の隅で何かが動いた。振り返ると、そこには人影のようなものが立っていた。

それは確かに人の形をしていたが、顔がなかった。ただ黒い影が人の形を取っているだけだった。その影はゆっくりと、彼女に向かって近づいてくる。彼女は恐怖で声も出せず、固まってしまった。

その影が彼女に触れようとした瞬間、彼女は叫び声を上げた。驚いたことに、その叫び声で周囲の空気が一変し、影は消えた。彼女は急いで家を出て、近くの友人宅に助けを求めた。

翌日、彼女はその家の過去を調べることにした。すると、数十年も前にその家で一人の女性が失踪した事件があったことがわかった。彼女はその家の住人で、夜中に何者かに襲われたらしいが、結局その犯人も、彼女の行方も見つからなかったという。

その話を聞いた彼女は、昨夜見た影がその失踪した女性の亡魂ではないかと考えた。そして、その家に住むことをやめ、都会に戻る決意をした。

しかし、それから何年も経った今でも、彼女は時折、あの冷たい影の感触を思い出し、背筋が凍る恐怖を味わうことがある。あの夜の出来事は、彼女の人生を変え、その恐怖は決して忘れられないものとなった。

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