愛媛県の山奥に、今から数十年前に存在した小さな村があった。そこは自然に囲まれた静かな場所で、人々は穏やかに暮らしていた。しかし、その平和な生活は突然終わりを告げた。ある日、村で謎の失踪事件が相次ぎ、村人たちは恐怖に駆られた。
最初に失踪したのは、村で唯一の教師だった。夜遅くまで勉強を見てくれる優しい男で、彼がいなくなった翌日から村の子供たちは不安そうに学校に来るようになった。次に消えたのは、村の郵便配達員だった。彼は毎朝のように村のあちこちを自転車で走り回っていたが、ある日突然姿を消した。
村人たちは集まって対策を話し合ったが、何も解決策は見つからなかった。そして、失踪事件はさらにエスカレートした。村の長老が、村の歴史を調べる中で、村の近くに古い祠があることを思い出した。その祠には、かつてこの地で虐殺された人々の怨念が宿っているという伝説があった。
一部の村人は、祠に夜な夜な供え物を持っていくようになった。だが、その儀式も効果がないかのように失踪は続いた。ある夜、勇気ある若者が一人で祠を訪れ、真実を確かめようとした。
夜の山道は静寂に包まれ、彼の足音だけが響く。祠に近づくと、そこには誰もが見たこともないような異様な空気が漂っていた。祠の前には、朽ち果てた供え物が散乱し、一部は新しいものだった。そして、祠の扉がゆっくりと開き、その中から恐ろしいほど冷たい風が吹き出した。
彼は恐れながらも中を覗いた。そこには、失踪した村人の姿が見えた。しかし、彼らは生きているようには見えず、ただ静かに座っているだけだった。その目は虚ろで、まるで何かを待っているかのようだった。若者は恐怖のあまり走って村に戻ったが、翌日になっても村人たちにはその話を伝える勇気が出なかった。
そして、その夜から村全体が異変に見舞われた。家々から不気味な声が聞こえ、夜中に誰かが歩く気配がした。村人たちは次々と家に閉じこもり、外に出るのを恐れた。そして、ある夜、村の中心部で大規模な火災が発生し、村は一夜にして焼け落ちた。
その後、愛媛県のこの場所は廃村となり、村人たちは他所へ散った。時折、冒険心旺盛な若者たちがこの廃村を訪れるが、その誰もが不吉な気配を感じ、長居することなく立ち去る。特に夜になると、燃え上がる炎の幻影や、泣き叫ぶ声が聞こえるという。
今でも、訪れる者たちはその場所で何かを感じ取る。失踪した村人たちの怨念か、それとも何か別のものか。ただ、この地には、決して消えない恐怖が残されていることは確かだ。