千葉県の片隅にある寂れた公園で、深夜の散歩が習慣だった男性がいた。彼は中年で、最近離婚したばかりだった。職場から帰るのが遅く、夜更けに家に帰る時間に公園を通ることが多かった。
その夜もいつものように公園に入ると、静寂が彼を包んだ。街灯の光が淡く照らす中、木々の間から風が吹き抜ける音だけが聞こえる。しかし、今日は何かが違う。
散歩を始めてしばらくすると、背後から規則正しい足音が聞こえてきた。最初はただの誰かが同じ時間に散歩しているのかと思ったが、その足音は彼の歩調に合わせてくる。振り返ると、誰もいない。
彼は歩調を変えてみたが、足音は再び彼のリズムに合わせてくる。見えない何かが彼を追っているかのようだった。心臓が早鐘を打つ中、彼は歩みを速めた。しかし、足音は止まらない。
公園の中心にある古いベンチに座り、少し息を整えた。足音は止まったようだったが、安堵する間もなく、今度は目の前の木から女の影が見えた。彼女は白い着物を纏い、長い黒髪が顔を覆っている。彼女は何も言わずにただ公園の真ん中で立っていた。
恐怖に駆られた彼は立ち上がり、公園から逃げ出そうとしたが、足がもつれて転んだ。顔を上げると、あの女の影は目の前に立っていた。彼女の顔は見えず、ただ存在感だけが恐怖を増幅させる。
「何かを探しているの?」と、彼女が囁くような声で言った。彼は答えられず、ただ震えていた。その時、風が強くなり、彼女の姿は消えた。足音も消え、公園は再び静寂に包まれた。
翌日、彼は公園に戻ってみたが、昨夜の出来事を確かめるような証拠は何も見つからなかった。ただ、公園の中央のベンチに座った瞬間、再び背後から足音が聞こえ始めた。恐ろしさに駆られ、彼はその日以来、公園を通らなくなった。
しかし、ある夜、彼の家に不思議な電話がかかってきた。「探しているものはまだ見つからない?」という囁き声だった。彼はその声を聞いた瞬間、背筋が凍る思いがした。それから数日、彼は何かが彼に付きまとう感覚から逃れることができなかった。
この物語の主人公は、単なる日常の散歩が恐怖の引き金となり、見えない何かに追い詰められていく。公園に漂う怪異は、彼の心の孤独や不安を象徴しているのかもしれない。そして、怪異が彼に何を求めるのか、誰にも分からないまま、恐怖は彼をいつまでも解放しない。