山奥の廃村で聞こえる笑い声

心霊体験

夜の帳が降りる頃、山道を歩いていた若者は、ひょんなことから古い廃村に迷い込んだ。

その村は長い年月を経て、ほとんどが朽ち果てていたが、その中央に一軒だけ、まだ形を留めている家があった。好奇心からその家に近づくと、扉は開け放たれ、風に揺れる音が耳に届いた。

中に入ってみると、埃が舞い、時間が止まったかのように静寂が支配していた。しかし、静けさが彼を包む中で、突然、子供の笑い声が聞こえた。彼は驚き、音の源を探すために家の中を歩き始めた。

笑い声は次第に大きくなり、まるで彼を追いかけるように部屋から部屋へと響く。窓から見える月光が唯一の光源となり、影が壁に踊る中、笑い声が一番大きく聞こえる部屋にたどり着いた。

そこは子供部屋だった。玩具が散乱し、ベッドには小さな人形が置かれていた。笑い声は今度は耳元で響き、彼は思わず振り向くが、そこには何もなかった。しかし、しばらくすると、再び笑い声が聞こえ、今度は窓の外から来るようだった。

恐る恐る窓に近づき、外を見ると、月明かりの中で何かが動くのが見えた。それは小さな影で、遠くからこちらを見つめているようだった。笑い声はその影から聞こえるように思えたが、視線を外すと、影は消えていた。

慌てて外に出ようとした若者は、入り口が閉ざされていたことに気付く。外から聞こえる笑い声は止まず、彼は恐怖に震えながら、家の中で夜を明かすしかなかった。

翌朝、ようやく外に出ることができた彼は、村を出るまでの間、その笑い声を一度も聞かなかった。しかし、その恐怖体験は彼の心に深く刻まれ、夜になると耳元でまた聞こえるのではないかと、何年経ってもその恐怖から逃れられずにいた。

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