古びた病院の怪現象

ホラー

長崎県にある小さな町で、私は新しい仕事を見つけるために引っ越してきた。町の中心から少し離れた場所に、古びた病院があった。その病院は数年前に閉鎖され、現在は廃墟と化しているが、地元の人々の間ではその場所にまつわる怪奇現象がささやかれていた。

引っ越して数週間後、私は病院の奇妙な噂を聞きつけ、興味本位でその場所を訪れることにした。日が傾き始めた夕方、病院の前に立つと、冷たい風が頬を撫でるように通り過ぎていった。入り口の扉は錆びついており、力任せに開けると、内部は埃と古い薬の匂いに満ちていた。

一階の受付を通り過ぎ、廊下を進むと、どこからともなく足音が聞こえてきた。だが、一人も見当たらない。心臓が早鐘を打ち始めた。次の瞬間、どこかから子供の笑い声が聞こえてきた。だが、その笑い声は次第に不気味な響きを増し、聞く者を恐怖に引きずり込むようなものだった。

二階に上がると、そこには何十年も前の医療器具が残されていた。診察室の一つに入ると、壁には誰かの爪で引っかかれたような痕跡が多数あった。私は急いでその部屋を出て、別の部屋へと足を進めた。そこでは、まるで誰かが今しがた使ったかのように、ベッドが整頓されていた。

さらに奥へ進むと、突然、背後から誰かに見られている感覚に襲われた。振り返っても誰もいない。だが、その感覚は消えず、私は冷や汗をかきながら病院を出ようとした。しかし、出口にたどり着く直前、看護師の制服を着た女性の幽霊が突然現れ、私に向かってゆっくりと手を伸ばしてきた。それは明らかに助けを求めるような動作だったが、その顔は苦悶に歪んでおり、目は虚ろだった。

恐怖で全身が震え、私はその場から逃げ出した。後日、地元の人々に話を聞くと、この病院ではかつて患者や看護師が不審な死を迎えていたという。特に、看護師の一人は精神に異常をきたし、患者の命を奪った後、自殺したという噂があった。その幽霊は彼女のものだと信じられている。

今でも、夜になると、その病院から聞こえる足音や笑い声、そして助けを求めるかのような幽霊の手が私の夢に現れる。そして、私は決して二度とその病院に近づかないことを誓った。

タイトルとURLをコピーしました