ある冬の夜、雪が降り積もる青森県の山奥の小さな村で、一人の男が古い民家に住んでいた。彼は都会から逃れるようにこの地に移住してきたが、村の人々は彼について話すのを避けていた。
その夜、風が激しく吹き、窓がガタガタと音を立てる中、彼は暖炉の前に座り、昔の写真を見ていた。その瞬間、背後から何かがそっと近づいてくる気配を感じた。振り返ると、そこには誰もいなかったが、部屋の空気が重く、冷たくなった。
彼は不安を感じながらも、自分に言い聞かせ、再び写真に目を落とした。すると、写真の中の風景が変わっていた。そこには、古い木造の家ではなく、見覚えのない廃屋が映っていた。
その夜、彼は何度も目を覚ました。毎回、部屋のどこかから聞こえる、かすかな足音や、何かが床を引きずる音に。恐怖に耐えかねて、翌朝早くに村の人を訪ねた。だが、彼が話したことは、村の人々に冷ややかに受け止められた。「この村には、知らない方が良いものがある」とだけ言われて、何の説明もされなかった。
数日後、彼は村の近くの森で古い墓石を見つけた。苔むしたその墓石には、彼の写真と同じ廃屋が描かれていた。そして、その廃屋の窓には、一人の男が立っている。その男は、彼自身にそっくりだった。
その夜、彼は再び足音を聞いた。だが、今度は明瞭に、彼の名前を呼ぶ声が聞こえた。恐ろしさに震えながら、彼は家から逃げ出すことを決意した。村を出る前に、古い住人に話を聞いた。「その家は、かつて若い男が死んだ家だ。そして、その霊は新たな住人を待ち続けている」と。
彼はその地を去ったが、時折、夢の中であの夜の恐怖が再び訪れる。そして、彼は今でも、どこかであの家が自分を待っているのではないかと恐れている。