闇に潜む恐怖

怪談

昭和のある寒々とした冬の夜、村は深い雪に覆われていた。電灯の光も届かない山奥の集落では、夜は早く訪れ、暗闇が全てを包み込む。そんな中、ある若者が友人と共に、村はずれの古い廃屋に足を踏み入れた。

その廃屋はかつて、家族全員が突然行方不明になった家のものだった。村人たちはその家に近づくことを避け、あの不可解な事件から数十年が経とうとしていた。二人は好奇心に駆られて、廃屋の扉を開けた。

中は埃にまみれ、時折風が吹き抜けると、木造の構造が軋む音が響いた。最初は何も起こらなかったが、二階へ上がる階段を登った瞬間、空気が変わった。寒さが一層増し、息が白く見えた。

部屋の一つに入った時、二人は目に見えない何かに押されるような感覚を味わった。そして、突然、部屋の隅から低い呻き声が聞こえてきた。二人は恐怖で立ちすくみ、声の元を探すこともできず、ただただその場に立ち尽くしていた。

その呻き声は徐々に大きくなり、やがては声なき叫びへと変わった。二人はもはや恐怖で足が竦んでしまい、逃げることもできなかった。そこへ、突然、部屋の壁が揺れ出し、古い写真立てが床に落ちた。写真にはかつてこの家に住んでいた家族の笑顔が写っていたが、その表情が歪んで見えた。

その瞬間、若者の一人が「出よう」と叫んだ。二人は慌てて階段を駆け下り、玄関へと向かった。しかし、玄関の扉は内側から鍵がかかっており、開かない。絶望感が二人を襲ったが、何かが彼らを助けようとするかのように、突然、裏口の窓が開いた。

二人は命からがら外へ飛び出し、後ろを振り返ることなくその場を走り去った。翌日、彼らは村の長老にその夜の出来事を話した。長老は静かに語った。「あの家には、解放されない魂がいる。決して近づいてはならない」と。

その事件以降、若者たちは二度とその廃屋には近寄らなかった。しかし、話はそこで終わらない。その数年後、別の若者が同じ廃屋に入り、同じような体験をしたと噂されるようになった。村人たちは、この恐怖の話を今も語り継いでいる。昭和の時代、その家の暗闇に潜む恐怖は、未だに解明されず、忘れ去られることなく、村の心に影を落とし続けている。

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