神奈川県には、大正時代にまつわる数々の恐ろしい怪談が伝わっています。以下にその一端をご紹介します。
厚木恵心病院跡の怪異
神奈川県厚木市にあった恵心病院は、その歴史と共に数々の霊の噂が立ち、恐怖の対象となっていました。大正時代、病院は手術の失敗で亡くなった患者たちの霊が出没する場所として恐れられていました。特に、手術室からは「痛い、痛い…」といううめき声が聞こえてくるという噂が広まりました。また、病院の屋上から飛び降りた女子高生の霊が出現するという話もあり、夜になると屋上から幽かな声が聞こえてくることがあったと言います。
この病院の廃墟は今でも心霊スポットとして知られ、冒険心を掻き立てられながらも、多くの人々がその恐怖に震えながら訪れる場所となっています。過去の悲劇が残した痕跡は、訪れる者に深い恐怖を植え付けるのです。
小机町の幽霊電車
神奈川県横浜市港北区の小机町は、第三京浜道路に近い場所として知られますが、大正時代にはこの地で「幽霊電車」の伝説が生まれました。ある晩、運転手は何もない線路を走行中に突然、目の前に現れた古い型の電車を見たのです。その電車はどこからともなく現れ、まるで生者の世界と死者の世界が一瞬交錯したかのような雰囲気を漂わせていました。運転手は驚きのあまり、すぐにブレーキをかけましたが、その電車は一瞬にして消え去りました。この出来事は、地元で語り継がれ、特に夜になるとその幽霊電車が現れると言われています。
この怪談は、当時の社会不安や大正デモクラシーの影響下で、多くの人々が精神的に不安定だった時代の象徴とも言えるでしょう。
箱根の山奥の洋館
箱根の深い山奥には、一度しかたどり着けない謎の洋館があるという話があります。大正時代に、ハイキング中の若者がこの洋館を見つけ、好奇心から中に入りました。しかし、その洋館には何も家具や生活感がなく、まるで時間が止まったような空間でした。彼は不思議な感覚に包まれながらも、外に出ると見覚えのない場所に立っていました。その後、どれだけ探してもその洋館には二度とたどり着けなかったと言います。
この話は、箱根という自然と神秘が交錯する場所ならではの怪談であり、時間や空間が歪むような不思議な体験が語り継がれています。
相模原の帰ってくるCD
相模原市では、ある家族が大正時代に購入した古いレコードを再生したところ、不可解な現象に遭遇しました。レコードから流れる音楽は美しいものでしたが、聞いているうちに家族の誰かが異常を感じ始めました。特に、夜中にそのレコードを再生すると、聞こえてくるのは哀しげな声や泣き声で、まるで亡魂がその音楽に乗せて訴えているかのようだったのです。
このレコードは、何度捨てても自宅に戻ってくるという奇妙な現象と共に、次第に家族間の話題から遠ざけられ、ついには地下室に封印されました。この話は、物を通じて伝わる亡魂の哀しみや怨念を描く、典型的な怪談として残っています。
これらの話は、大正時代の神奈川県が抱えていた社会的な混乱や個々の心の闇を反映していると言えるでしょう。戦争や地震などの大災害、そしてそれに伴う精神的な不安定さが、怪奇現象として具現化されたのかもしれません。神奈川県の地元の人々にとって、これらの怪談は地域の歴史や文化の一部として、今も語り継がれています。