平成のある晩、岩手県のとある山奥で、友人たちとキャンプを楽しんでいたKは、夜中にトイレのためにテントから出ることにした。山の新鮮な空気を吸いながら、少し離れた場所にある簡易トイレに向かった。
しかし、トイレから戻る途中、Kは何かが自分を追いかけているような気配を感じ始めた。振り返る度に、闇の中から聞こえる足音が間近に迫ってくる。心臓が早鐘を打ち、冷や汗が流れる中、Kは必死に走った。
キャンプサイトに戻った時、友人たちはみな既に寝静まっており、誰もその異常な出来事に気づいていなかった。Kは一晩中、テントの中で目を閉じることさえできず、朝を迎えた。
翌朝、友人の一人が山道を散歩しながら、昨夜Kが感じた場所で怪しげな古い靴を見つけた。その靴は明らかに現代のものではなく、なぜか湿った土と血の痕跡が付着していた。
その話を聞いたKは、昨夜の恐怖が現実だったことを確信し、急いでキャンプから脱出しようとした。しかし、帰り道でもあの足音が追ってくるような気がして、Kは二度とその山に近づかないと誓った。
数年後、地元の年寄りから聞いた話によると、昔、その山道では山賊が出没し、多くの旅人が命を落としたという。特に夜になると、あの足音は何度も聞かれることがあったそうだ。Kの体験は、ただの偶然ではなく、過去の怨念が再現されたものだったのかもしれない。
この話は、平成時代に岩手県で語られた恐怖話の一つとして、今でも地元の人々の間に囁かれている。夜の山道は、何かが見えない闇に潜んでいるのかもしれない。