黒山の願い

黒山の願い 心霊体験
黒山の願い

私の住む町は山間にあり、その山々は深く、古い歴史を持つ。特に、私の家から見える一つの山——それは「黒山」と呼ばれ、地元では幽霊や妖怪が出るという伝説が数多く語られています。

私の家は代々この地に住む者で、その黒山の麓に広がる森の中に建っています。幼い頃から、私はその山に興味を持ち、友人達とよく探検に行きました。しかし、ある日を境に、私は二度とその山に足を踏み入れることはなくなった。

それは夏の終わり、学校が夏休みの最後の日に起こったことです。私と幼馴染みの二人で、黒山に登ることを決めました。目的は、友人が言うには、山頂近くにあるという「願いが叶う井戸」を見つけることでした。私たちはその話を信じていたわけでもなく、ただ冒険心からでした。

山道は険しく、時折怪しい音が聞こえたり、気味の悪い風が吹いたりしました。しかし、私たちはそれを「怖い話」のネタだと思い、笑いながら進みました。途中で見つけた古い道標には、「ここから先は危険」と書かれていましたが、無視して進みました。

そして、日が暮れかかった頃、私たちは森の中で一つの井戸を見つけました。それはまるで、誰にも見つけて欲しくないかのように、木々に覆われ、苔が生い茂った場所にありました。井戸の側には一つの古い石碑があり、「願いを叶えるには犠牲が必要」と刻まれていました。

友人は冗談で井戸にコインを投げ入れ、何かを願いました。私もまた、ただの遊びだと思って同じようにしました。しかし、その瞬間から空気が変わり、辺りが急に暗くなったように感じました。そして、風が止まり、何かが近づいてくるような気配がしました。

私たちは慌てて帰路につきましたが、道が分からなくなっていました。地図も携帯電話も役に立たず、唯一の光は友人が持っていた懐中電灯だけでした。暗闇の中、私たちは必死に道を探しました。

その時、私たちの前に一人の女性が現れました。彼女は白装束を纏い、顔は見えませんでした。彼女は何かを囁くように低い声で、「願いを叶えるには犠牲が必要」と言いました。私たちは恐怖で身動きが取れず、そのまま彼女が近づいてくるのを見つめていました。

その後、私が気づいた時には、私は自宅のベッドの上にいました。友人は姿を消し、どれだけ探しても見つかりません。家族に昨日のことを尋ねると、彼らは私が一晩中家にいたと言い張りました。

それから数日後、私は再び黒山に足を踏み入れました。あの井戸を探すためでした。井戸は見つかりましたが、そこには友人の靴と、彼の携帯電話が沈んでいました。携帯電話には最後のメッセージが残されていました。「助けて」。

その日から、私は毎晩、夢の中であの女性の姿を見ます。彼女は私に何かを求めているかのように、近づいてくるのです。そして、友人の声が聞こえます。「助けて」と。

私はこの経験を誰にも話せず、ただ一人でその恐怖を抱えています。黒山は今も変わらずそこにあり、夜になると山から何かが見えない声が聞こえてくるのです。友人の犠牲が何を意味していたのか、今もってわかりません。

町の人々は黒山の話を避けるようにし、特に夜は外出を控えます。私もまた、山に近づくことはなくなりました。ただ、毎年夏の終わりに、その日を思い出し、友人の笑顔を胸に、静かに夜を過ごします。

それ以来、私は願い事をする時、必ず犠牲を伴うのかもしれないという恐怖を抱くようになりました。そして、この話をあなたに伝えることで、少しでも心の重荷を軽くしようとしています。願いが叶う代わりに何かを失う——そんな恐怖が、この町の夜に潜んでいるのです。

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