北海道の冬は、雪と氷の美しさで知られています。しかし、その美しさの裏には、恐ろしい話が数多く隠されています。ここでは、北海道にまつわる、身の毛もよだつような怖い話を一つお届けします。
北海道の小さな村、寒風ヶ原村。その村は、深い雪と暗闇に覆われた冬の季節に特に恐ろしい現象が起こると言われています。村には、「雪の女」という伝説が代々語り継がれていました。雪の女は、白い着物を纏い、髪も肌も雪のように白く、目だけが異様に黒い女性です。
ある冬の夜、若い医師の高木健一が、村唯一の診療所で夜勤をしていました。彼は都市部から移住してきたばかりで、村の伝説について半信半疑でした。夜が更け、雪がさらに激しく降り始めたその時、診療所のドアがノックされました。ドアを開けると、そこには一人の女性が立っていました。彼女は雪の女そのものでした。白い着物から雪が落ち、彼女の目は暗闇の中でも異様に光っていました。
「助けてください…」彼女の声は凍てつくような冷たさで、高木は反射的に彼女を診療所の中に入れました。彼女は何の症状も訴えず、ただ黙って座っていました。高木は彼女の体温を測ろうとしても、体温計が異常に低く表示され、ほとんど機能しない状態でした。
時間が経つにつれ、高木は気づきました。外から見える雪は止んでいましたが、診療所の窓には新しい雪が積もり続けているのです。そして、診療所の温度も急速に下がっていました。高木は恐怖を感じつつも、彼女に近づき、話しかけようとしました。しかし、彼女の口から出るのは氷のような息だけで、言葉はありませんでした。
その時、高木の後ろから何かが動く音が聞こえました。振り向くと、診療所の奥からもう一人の「雪の女」が現れました。彼女たちは同時に高木に向かって歩き始め、診療所全体が凍りつき始めました。高木は逃げようとしましたが、ドアは凍りつき、窓も開かなくなっていました。
突然、彼は気を失いました。翌朝、村人たちが診療所に来てみると、高木は青白く凍りついた状態で発見されました。彼の体からは生命の兆候が消え、診療所自体も氷の宮殿のように変わっていました。雪の女は姿を消し、村には再び静けさが戻ったのですが、以降、寒風ヶ原村では冬の夜に診療所を訪れることは誰もが避けるようになりました。