闇に隠された記憶

実話風

数十年以上前、ある地方都市の小さな家で暮らす家族がいた。

その家の最上階には、使われていない古い部屋があった。家族はその部屋を「禁断の部屋」と呼んでおり、誰も近づかないようにしていた。なぜなら、何十年も前にそこで起こった悲劇的な出来事が、未だにその部屋に棲みついているかのように感じていたからだ。

ある晩、好奇心旺盛な少年がその部屋に忍び込んだ。部屋の中は埃と古い家具で埋め尽くされていたが、一つだけ異常に清潔な机があった。その机の上には、古びた手帳が置かれていた。少年は手帳を開き、最初のページに目を通した。そこには、「この部屋には決して入ってはならない」と書かれていた。

しかし、少年はその警告を無視し、手帳のページをめくり続けた。すると、手帳の途中から、異常なことが記されていた。「夜、窓から見える影が動く」「誰かがこちらを見ている気配がする」「部屋の隅から声が聞こえる」といったメモが次々と現れた。

その夜、少年は夜中に目が覚めた。部屋は静まり返っていたが、間違いなく何かがいる気配があった。窓から月明かりが差し込んでおり、部屋の隅に不気味な影がゆっくりと動いていた。少年は恐ろしさに身を震わせながらも、何とかその影を確認しようと近づいた。

すると、影は輪郭を変え、人の形を取った。声が聞こえた。「出て行け」と。少年はその声に震え上がり、その場から逃げ出した。しかし、逃げる途中で何かが足を掴む感覚があり、振り返った瞬間、視界が暗転した。

翌朝、家族が少年の姿を探したが、彼はどこにも見当たらなかった。禁断の部屋を調べると、少年の持っていた手帳が机の上に置かれていた。だが、その手帳には新たなメッセージが加わっていた。「私はここにいる。あなたも来るべきだ」

その後、家族はその家から引っ越すことを決断したが、少年の影を求めて何度も戻ってきたという。そして、禁断の部屋はそのままにされ、今も誰も中に入ることなく、静寂の中に閉ざされている。それは、誰もが忘れたくても忘れられない、深い闇の記憶として残っている。

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